もう1つの「Don Juan」
先日我が土浦交響楽団は、設立34年にして、初めてRichad Straussの作品を演奏。オーケストラ作品の中でも、難しい部類に入るRichard作品ですが、その中では比較的簡単な交響詩「Don Juan」。あくまで「比較的」ですがね。同名のオペラがMozartにあって、そちらは言語の読み方の都合で「Don Giovanni(イタリア語)」です。
実はアルゼンチン・タンゴにも「Don Juan」という曲があるのですよ。そもそも「Don Juan」とは、17世紀スペインの伝説上の放蕩児のことで、プレイボーイの代名詞として使われます。つまりはRichardの交響詩もMozartのオペラも、同じテーマって事。そしてこのTangoも。
Violin奏者なのですが、
タンゴ創世記の人で、
生没年などのデータははっきりしていませんが、作曲された年が1898年と言われています。これは現在よく演奏されるタンゴの曲としては、2番目に古いのですが(1番目は1897年作曲の「El Entrerriano」)、何とRichartdの交響詩のほぼ10年後なのです。Richardはこの曲を20代半ばで書いたので、下手すればPonzioと同世代である可能性もゼロではありませぬ。
さすがにRichardがPonzioの「Don Juan」を聞いたとは思えませんが、その逆はあり得ます。当時ブエノスアイレスは、南米の中にあって、かなり欧州色が濃く、また港町という事もあり、文化、経済、いろいろな面で欧州のものが入ってきました。ちなみにBandoneonがドイツからブエノスに伝わったのも、20世紀初めと言われています。
またブエノスは世界3大オペラ・ハウスの1つ、テアトル・コロンがありますし、その後Daniel BaremboimやMartha Argerichを生む土壌を考えると、Richardの「Don Juan」も、初演後すぐではないにしろ、取り敢えず南米初演はブエノスでやった可能性は高いですな。
さてテーマを同じくし、ほぼ同時代に出来たこれらの曲。国やジャンルが違うとは言え、曲のキャラクターは全く正反対。Richardの方は精悍な曲で、勇ましい第1テーマに第2テーマも開放的な明るさがあり、簡単に言うと「カッチョイー」曲です。
そしてTangoのPonzioの方はと言うと、かなりすっとぼけた感じで、編曲者によっては、其れを更に強調し、間抜けな雰囲気にしたりも。一言で言えば「楽しい」曲です。
まぁ、この違いはRichardの方は、「Don Juan」の筋書きを音楽にしているもの、Ponzioの方は「プレイボーイの代名詞」という事でのものでしょう。ちなみにPonzioはこの曲を当初違う題名を付けていたのですが、ファン・カベージョという人に捧げるときに、今の題名に改題したそうな。カベちゃんは余程のプレイボーイだったんだろうね。
ここで付け足し考。今回のように、クラシックとタンゴのような大衆音楽で、同じタイトルの作品って、どれくらいあるのでしょうか。もちろん探せばたくさんあるのでしょうけど、そのジャンル内ではそこそこ有名になっているものに限れば、あまり見あたらないのかも知れませぬ。ちなみにTangoにおける「Don Juan」はそこそこ有名どころか、スタンダード曲です。
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