今月初めに無事放送終了した、NHK連続テレビ小説「てっぱん」。番組スタッフは、東日本大震災のために、打ち切りも覚悟していたらしいです。
お陰様でサントラ盤の売り上げも好調。放送中は劇中で流れている曲の問い合わせがNHKによくあったみたいで、サントラに入っているならば良いのですが、そうでない曲が困るのです。ちなみにサントラ盤の準備は、放送開始直後から始まっているので、後から録音した曲は、サントラの選曲候補にはなりません。
今回は3回目のセッション(2011年1月16日参照)で録音した曲を解説したいと思います。
いずれもよく問い合わせがあった曲。
まず譜例1。
「MIORI」という曲です。
これは主人公村上あかりを演じた、瀧本美織さんのために書いたもので、演出家から「村上あかりではなく、瀧本美織という曲を」というオーダー。つまり役者瀧本美織さんを表した曲です。...って、待って下さいな、会った事も喋った事もないのに、その人を表した曲を書けって!?
ある意味今回一番苦労した曲でした。「村上あかり」ならば、ドラマの中で散々見ているので簡単に書けますが、其れを演じている瀧本美織さんですからねぇ。打ち合わせのときに「んじゃ、会わせて下さいヨ」とも言えたのですが、ここは大見得を切って、「わかりやした!会わずに書きましょう」と、一流作曲家っぽく振る舞い、完成させたというワケ。
オーケストラ・バージョンとPiano Soloバージョンとあって、Piano Soloは他の曲同様、楽譜無しで即興で弾いています。
そして譜例2。「解散」という曲です。これは田中荘の住人が、それぞれ独立していく様を描いています。編成に意味を付加していて、
Piano→おばあちゃん
Trumpet→あかり
Clarinet→滝沢君
Fagotto→笹井さん
Violin→民男君 Violoncello→民男君のお父さん
Strings→田中荘を取り巻く人々
劇伴なので、劇中では全曲流れる事はありませんでしたが、曲自体はストーリー性があって、おばあちゃんが始めた下宿屋、次第に住人が増え、あかりも入居。駅伝君の走る姿、そして中岡親子が去り、最後にはあかりとおばあちゃんが残る。
そういうストーリーを軸に、同じフレーズを編成を変えながら、何回も繰り返しています。哲学的な曲で、メロディー自体はシンプルです。曲中ずっと維持されるシンコペーションは、このドラマのテーマである食を表していて、いつ何時でも途切れずに...。
いや、原曲では途切れるんですわ。これがまた意味深で、またすぐに回復するのですが、そういったときの聞き手のハッとする部分が、この曲の聞かせ所でもあります。
来月には弦楽合奏団弓組第1回公演で、「てっぱん」に登場する曲をたくさん演奏しますが、残念ながら管楽器のない編成なので、「MIORI」も「解散」も出来ません。これはすぐにも第二弾を企画しなくては!
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