巨人のバンダ
CDで聴いていると「ただ小さいだけ」に思えてしまうかも知れませんが、先日我ら土浦交響楽団が演奏したMahlerの「Symphony No.1」は、ちょっとした仕掛けがありまする。
曲が始まって数分。Trumpetの音が聞こえるけど、舞台では吹いていない! これはバンダと呼ばれる、別働隊が演奏しています。
作曲者Mahlerは、楽譜上に沢山の指示を書く人。その別働隊も指示の1つ。まぁ、どこまで具体的かというのは、ビミョーなものもあるんですが。
何しろ指示では「In sehr weiter Entfernung aufgestellt」とあり、
訳すと「非常に遠くに設置する」ってコト。
非常に遠くねぇ...。
確かにコレ、
ちゃんと考えないと、大して演奏効果はありませぬ。
要するに遠くでラッパが鳴っている、という雰囲気が大事なのですが、単に舞台袖で吹いただけだと、全然「遠く」という感じがしない。ノバホールの下手側袖は、そんなに広くは無いので、隅っこで吹いたとしても同じ。
結局は廊下にまで下がって吹かないと、「遠くから」という演出がなされないワケ。しかもMahler先生は「非常に遠く」と言っているし。会場リハではアタシがサウンド・チェックをしましたが、「もっと遠く!」と連呼しました。まさかこんなに奥で吹いていたとは...。
ただそうなるとステージ上の指揮者が見えませんので、もう1人バンダに対する第2指揮者が必要。ステージ上の指揮者の刻むテンポを、バンダの連中に伝える重要な役目。
そしてコレを吹き終えると、演奏中のステージにそぉーっと入って、何事も無かったかのように、みんなと一緒に演奏。
さすがに啼鵬はバンダでの演奏、無いなぁ。
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確かにバンダは聴くことがあっても経験はしたことありません。
同じくマーラーの交響曲第8番は、女声合唱で「天上から聴こえるように」という指示があって、3階席で歌っていたのを思い出しました。
ホールもよく響くミューザ川崎だったので、その効果は抜群だったことを覚えています。
まあ、ずいぶん前にホルストの「惑星」の女性合唱をホールの通路で歌うというのもありましたが、それもなかなかでした。最後消え入るところは、段々ホールレセプショニストが扉を閉めるという粋な演出をしていました。
(すぐ近くにいたオジサマは、「ん?どこかで声が聞こえる…」と独り言をつぶやいていて、少々興覚めしたのも、今じゃ懐かしい思い出です。)
投稿: 語る会 | 2018年6月11日 (月) 09時37分
> 語る会さん
私も書き手として、楽曲にバンダ指定をしようとしても、書き上がってから「そう言えばバンダにするんだった」と省みるのです。
思うにバンダは楽想の中にあるものではなく、「バンダ有りき」という条件でやるものかと。
Mahlerを風刺したもので、新たな楽器に出会った彼が「おぉ、これでまた1曲、交響曲が書ける!」というものがありました。バンダもその類かと。
投稿: ていほう | 2018年6月11日 (月) 22時59分