最近の日本サックス界の動向も、少しは情報が入ってきているので、彼らの事は知っていました。しかもその世代では群を抜いて人気者だと。んで、期せずして啼鵬編曲の楽譜を提供する事になり、演奏会に行って参りやした。
1曲目からいきなり客席から手拍子が起こり、「なんじゃ、1曲目なのにアンコールみたいなノリは!」と戸惑う啼鵬。彼らの演奏は動画でしか聴いていなくて、結構おちゃらけな動画も。あぁ、末期とは言え、一応昭和世代であるテーホーにはついていけぬ。
と思っていたのですが、Piazzollaの「Four for Tango」を聴いて、彼らはタダ者では無いと認識。スゴい。弦楽四重奏が原曲で、しかもPiazzolla、と言うかTango独特の奏法満載のこの曲を、Saxophoneで再現するのは、多くを聴いた訳ではないけど、Adamの演奏が頂点かも。Sax Quartetでこれ以上の演奏はないな。オリジナルの弦楽四重奏でも、Tambor pizzicatoやChicharraがちゃんと出せていない輩も多いのに。
そして啼鵬編曲の「ブエノスアイレスの四季」。いや、そういう曲はありません。Piazzollaは夏だけ作って、後から足したので、正直この春夏秋冬を一気にやるのは、我々タンゴ屋からしてみれば、大分勇気がいること。1曲毎にちゃんと完結して拍手を頂き、きちんとクール・ダウンしてから次の曲を。でないとあの重々しい空気にお客さんもついていけないんじゃ...。
果たしてAdamの演奏、これには参った。正直聴く前はトルヴェールの真似事で終わると、高をくくっていましたが、明らかに彼らはかなり掘り下げた部分でPiazzollaの音楽を追求。Adamのポテンシャルを感じた瞬間でしたわ。小松亮太君もこういう演奏を聴けば納得するんじゃないかなぁ。っつーか、1曲目とのギャップが...。空気感の変化、ハンパない! これほど振り幅の大きな演奏会も珍しい。
個人的には宮川彬良さんのスコアによる「私が愛したロイドウェーバー」が感涙もの。曲そのものと言うより、思い出で。アタシのPiazzollaも宮川さんのロイドウェーバーも、四半世紀ほど前に書いたもの。まだ駆け出しだった啼鵬に、いろいろ激励して下さったのが宮川さん。これらの曲が収録されているアルバム「My Favorite Things」を録音していた、東芝EMIのスタジオでの宮川さんとのやりとりを思い出し申した。
こうして昔のスコアを今の若手が再演。啼鵬も久しぶりに宮川さんのロイドウェーバーを、生演奏で聴いたワケですが、弾き継いでいく事は大事かも知れませぬ。
それにしてもAdam。今後Piazzollaはどうするのかな。今回たまたまの一過性でも全然イイですわ。「やってみました」的な演奏を遥かに超えた結果を出しているので。偉大な先人、Vive! Saxophone Quartetに続いて追求するも良し。
あぁ、こういう演奏会を「次世代型」と言うんだろうか。楽譜もタブレット端末だったし...ってとこはどうでも良いですが、明らかに違う、昭和とか90年代とは。もちろん其れは音楽史で見たって、スタイルは変遷するものなので、今後も変わっていくものなのでしょう。
楽しい時間を有り難うございました。オッサンにはちょっとついていけない部分もありましたが...。サプライズのためには、偽のリハもする! 好きです、そういうの。10周年おめでとうございます。
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